子どもの実践そのものに眼を向けること

2011.07.21

保育実践のむずかしさは、実践のなかで実践を対象としているところにある。実践は多様で、複雑で、あいまいで、不確定要素が多く、とらえどころがない。こうした実践の総体は、繰り返されるルーティンの構造をもちながら、日々、刻々と変化している。「子どもの実践知」は、その学びと変化を生み出す宝庫といっています。保育実践は、次世代の子どもが文化を継承し、新しい文化を創造していくのを助ける役割を果たしてきた。しかしながら、保育過程における実践知加研究対象として広く認知されるようになったのは、国内の異文化問教育研究では、ごく最近のことである。学会の発足(1981年)から20年以上たつ異文化間教育学会の研究動向をみても、研究者が保育実践の場に赴き、実践場面における子どもたちの認知、思考やものの見方にふれ、そこで享受したものを理論化するまでに至っていない。その間、諸外国における制度ないしは社会的組織を中心とした研究、個人の能力として教育や測定が可能とされる知識などの研究がすすめられてきたが、既存の研究と現場の実践知との差は広がる一方で、実践的な応用面での限界も指摘されはじめている。そこで、この章ではこれまでのメインストリームの異文化間教育研究ではほとんど言及されてこなかった「子どもの実践知」を分析対象とする理論的な意義について、この分野における先駆的な研究と関連づけながら考察を試みることにしたい。まず、手始めに、「子どもの実践知」を探究する手がかりとして、「主な使用言語」「家族の民族的背景」および「家庭が基盤としている文化」が重複している子どもの「日常的な実践」場面をとりあげる。

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